抽象画の描き方を解説!初心者でも簡単なコツや道具の揃え方

絵を描くこと、特に形のないものを描く抽象画って、なんだか難しそうに感じませんか。

こんにちは、アザミです。

私自身、もともとアートとは無縁の世界にいたのですが、一枚の絵に心を奪われて以来、その魅力の探求を続けています。

だからこそ、アートを始めたばかりの方が抱く「何から始めたらいいんだろう?」という気持ちが、とてもよく分かるんですよね。

この記事では、かつての私と同じような初心者の方が、抽象画という自由なアートの世界へ一歩踏み出すためのお手伝いができればと思っています。

抽象画の描き方には、実は決まった正解がありません。

だからこそ、誰でも気軽に、そして簡単にはじめることができる表現方法なんです。

この記事を読めば、専門的な道具がなくても、まずは家にあるものや手に入れやすいアクリル絵の具を使って、どんな風に描いていけばいいのかが分かります。

キャンバスを前にしてアイデアが思い浮かばない時のためのヒントや、描きたいテーマを見つけるためのコツも一緒に見ていきましょう。

ドリッピングのような簡単な技法から試してみれば、きっと自分だけの表現を見つける楽しさを感じられるはずです。

作品の色選びが感情の表現にどう繋がるのか、また、有名な画家の作品からどんなインスピレーションを得られるのか、そんなアートの奥深い話もしていきたいと思います。

そして、完成した作品は、ぜひお部屋のおしゃれなインテリアとして飾ってみませんか。

デザインの一部として自分のアートがある生活は、とても素敵なものですよ。

この記事を通して、筆やナイフを手に取り、自分だけのモチーフを自分だけの表現で描くことの楽しさを、皆さんと分かち合えたら嬉しいです。

この記事で分かる事、ポイント
  • 初心者でも分かる抽象画の描き方の基本
  • 最初に揃えるべき基本的な道具リスト
  • アクリル絵の具が初心者におすすめな理由
  • 絵を描き始める前のアイデア出しのヒント
  • 誰でも試せる簡単な抽象画の技法
  • 作品をより魅力的に見せる色の組み合わせのコツ
  • 完成した作品をおしゃれなインテリアとして飾る方法

 

目次

初心者でも楽しめる抽象画の描き方の基本ステップ

この章のポイント
  • まずは描くために必要な道具を揃えよう
  • 初心者にはアクリル絵の具がおすすめの理由
  • キャンバスに向かう前の簡単なアイデアの出し方
  • 何を描くか決まらない時のテーマの見つけ方
  • ドリッピングなど簡単な技法から試してみる

まずは描くために必要な道具を揃えよう

抽象画を描いてみたい、と思ったとき、最初に頭に浮かぶのは「どんな道具が必要なんだろう?」という疑問ではないでしょうか。

画材屋さんに行くと、あまりにもたくさんの種類の道具が並んでいて、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。

でも、安心してください。

最初からすべてを完璧に揃える必要は全くありません。

まずは、これさえあれば始められる、という基本的な道具から揃えていくのがおすすめです。

私自身も、最初は本当に最低限の画材からスタートしました。

ここでは、初心者の皆さんが抽象画の世界に飛び込むために、まず手に入れておきたい基本的な道具について、一つひとつ見ていきましょう。

必ず揃えたい基本の道具

何を描くか、どんなスタイルで描くかによって必要なものは少しずつ変わってきますが、以下の道具は抽象画制作の基本となります。

私が考える、これだけは持っておきたいというリストをご紹介しますね。

  1. キャンバス: 絵を描くための土台です。最初は練習用に、手頃な価格のS.M.(サムホール)サイズやF3号くらいの小さめなものから始めると良いでしょう。
  2. 絵の具: 初心者の方には、扱いやすくて乾きも早いアクリル絵の具が特におすすめです。理由は次の見出しで詳しくお話ししますね。
  3. : 最初は、太い筆、中くらいの筆、細い筆の3本くらいがあれば十分です。様々な表現を試したくなったら、少しずつ買い足していくのが楽しいですよ。
  4. パレット: 絵の具を混ぜ合わせるための板です。使い捨てのペーパーパレットは後片付けが簡単なので、とても便利です。牛乳パックを開いて代用することもできます。
  5. 水入れ: 筆を洗ったり、絵の具に水を加えたりするために使います。空き瓶や使わなくなったコップで大丈夫です。
  6. 雑巾やキッチンペーパー: 筆の水分を拭き取ったり、こぼれた絵の具を拭いたり、時には絵の具を叩きつけて質感を出すのにも使えます。

あると表現の幅が広がる道具

基本的な道具に慣れてきたら、次に挑戦してみたいのが、表現の幅をぐっと広げてくれるアイテムたちです。

これらは必須ではありませんが、使うことでアートがもっと面白くなること間違いなしです。

特にパレットナイフは、筆だけでは出せないダイナミックな質感が生まれるので、私が個人的にとても好きな道具の一つです。

絵の具をキャンバスに乗せて、バターをパンに塗るような感覚で広げていくと、思いがけない表情が見えてくるんですよね。

  • パレットナイフ: 筆とは違う、硬質でシャープな線や、盛り上がった絵の具の質感を出すのに使います。
  • ジェッソ: キャンバスの下地材です。塗っておくことで絵の具の発色が良くなったり、絵の具がキャンバスに染み込みにくくなります。
  • メディウム: 絵の具に混ぜて使う補助剤です。光沢を出したり、乾燥を遅らせたり、盛り上げたりと、様々な種類があります。
  • イーゼル: キャンバスを立てかける台です。床や机で描くこともできますが、イーゼルがあると、描いている絵全体を見渡しやすくなり、制作がスムーズに進みます。

これらの道具は、最初から全てを買い揃えるのではなく、自分の描きたいスタイルや興味に合わせて少しずつ試していくのが良いと思います。

道具選びも、アート制作の楽しみの一つだと感じませんか。

まずは基本の道具を手に、気軽にキャンバスに向かってみましょう。

初心者にはアクリル絵の具がおすすめの理由

抽象画を描き始めるにあたって、絵の具選びはとても重要なポイントになります。

油絵の具、水彩絵の具、そしてアクリル絵の具と、様々な種類がありますが、私がアートを探求する中で「これは初心者の方にぴったりだ」と感じたのがアクリル絵の具なんです。

その理由はいくつかありますが、一言でいうと「扱いやすさ」と「表現の幅広さ」を両立している点にあります。

私自身、初めて本格的に絵を描こうと思った時に手にしたのがアクリル絵の具でした。

その時の感動や驚きは今でも覚えています。

ここでは、なぜアクリル絵の具が抽象画の第一歩におすすめなのか、その魅力について詳しくお話ししていきたいと思います。

乾きが早く、重ね塗りがしやすい

アクリル絵の具の最大の特徴は、何といっても乾燥が非常に速いことです。

これは、特に抽象画を描く上で大きなメリットになると私は考えています。

抽象画は、具体的な形を描くのではなく、色や形を重ねながら、その時の感情やインスピレーションをキャンバスにぶつけていく作業が多いですよね。

例えば、最初に塗った色が「ちょっと違うな」と感じた時、アクリル絵の具なら数分から数十分で乾くので、すぐに上から別の色を重ねて修正したり、新しい表現を加えたりすることができます。

この「待たなくていい」というスピード感は、創作の勢いを止めずに、次々とアイデアを試すことを可能にしてくれるんですよね。

油絵の具だと乾燥に数日かかることもあるので、この差は大きいと思いませんか。

水で溶けて、後片付けが簡単

もう一つの大きな魅力は、水溶性であることです。

パレットに出した絵の具は水で溶いて使うことができ、使った後の筆やパレットも水で洗い流せます。

油絵の具のように特別な洗浄液(クリーナー)を必要としないので、準備や後片付けの手間が格段に少なくて済みます。

これは、気軽にアートを始めたいと思っている方にとって、とても嬉しいポイントではないでしょうか。

ただし、一つだけ注意点があります。

アクリル絵の具は一度乾くと耐水性になり、水に溶けなくなります。

ですから、服に付いてしまったり、パレットの上で固まってしまったりすると落とすのが大変です。

制作中は汚れても良い服装を心がけ、パレットや筆は使い終わったらすぐに洗う習慣をつけると良いでしょう。

多彩な表現が可能

アクリル絵の具は、そのままだと少し厚みのある、こってりとした質感ですが、加える水の量によって様々な表情を見せてくれます。

  1. 厚塗り: 絵の具をそのまま、あるいは少量の水で溶いて使うと、油絵の具のような重厚感のある表現ができます。パレットナイフを使えば、さらに立体的な質感を出すことも可能です。
  2. 薄塗り: たくさんの水で溶くと、水彩絵の具のような透明感のある、にじみやぼかしの表現も楽しめます。

このように、一つの絵の具で全く異なる二つの画材の特性を味わえるのは、アクリル絵の具ならではの面白さだと感じます。

さらに、ジェッソやメディウムといった補助剤と組み合わせることで、表現の可能性は無限に広がります。

まずはアクリル絵の具の基本的な使い方に慣れて、そこから自分だけの表現を探求していく。

そんなアートの旅の最初のパートナーとして、アクリル絵の具は最高の選択肢の一つと言えるかもしれませんね。

キャンバスに向かう前の簡単なアイデアの出し方

真っ白なキャンバスを目の前にすると、「さあ、何を描こう?」と急に手が止まってしまうこと、ありますよね。

私にも経験があります。

特に抽象画は、具体的なお手本がない分、自由すぎて逆に戸惑ってしまうのかもしれません。

でも、この「ゼロから何かを生み出す」というプロセスこそが、抽象画の醍醐味でもあるんですよね。

大切なのは、完璧な完成図を頭の中に描こうとしないことです。

アイデアは、計画的につくるというよりは、ふとしたきっかけから「見つける」ものに近いと私は感じています。

ここでは、ガチガチに考え込んでしまう前に、心をほぐして、描くヒントを見つけるための簡単な方法をいくつかご紹介したいと思います。

一緒に、アイデア探しの散歩に出かけるような気持ちで見ていきましょう。

心の中にあるものを探る

抽象画は、自分の内面を表現するのに最適なアートです。

難しく考えずに、今の自分の気持ちに素直に耳を傾けてみませんか。

  • 感情を色にする: 今、どんな気持ちですか?「嬉しい」「穏やか」「ちょっとモヤモヤする」など、その感情を色で表現するなら何色でしょう。例えば、嬉しい気持ちなら明るい黄色やオレンジ、穏やかなら優しい水色や緑かもしれません。その色を、まずはキャンバスに置いてみることから始めてみましょう。
  • 好きな言葉から連想する: 「光」「風」「夢」「繋がり」など、心に響く言葉はありますか。その言葉から連-想されるイメージを、形や線、色で表現してみるのも面白い方法です。

大切なのは、上手く描こうとしないこと。

心に浮かんだ色や形を、ただ素直にキャンバスに乗せていくだけで、それはもうあなただけの立派な作品の始まりです。

五感を使って外部からヒントを得る

自分の内側だけでなく、外の世界にもアイデアの種はたくさん転がっています。

普段何気なく見過ごしている風景や音に、少しだけ意識を向けてみましょう。

  1. 音楽を聴きながら描く: 好きな音楽をかけて、そのリズムやメロディ、雰囲気を線や色で表現してみましょう。激しい曲ならダイナミックな線を、静かな曲なら滑らかな線を描いてみるなど、音を視覚化するような感覚です。
  2. 自然の形を参考にする: 公園を散歩して、木の皮の模様、葉脈の形、石の質感などを観察してみましょう。それらをそっくりそのまま描くのではなく、面白いと感じた形やパターンだけを抽出して、自分の作品に取り入れてみるのです。
  3. 偶然性を楽しむ: 最初の一手を、偶然に任せてみるのも一つの手です。目を閉じてパレットから色を選んでみたり、絵の具をキャンバスに垂らしてみて、そこからできた形を元に描き進めていく「ドリッピング」という技法もあります。この方法は、予期せぬ発見があってとても刺激的ですよ。

これらの方法は、あくまでもきっかけ作りの一例です。

一番大切なのは、描くことを楽しむ気持ちだと私は思います。

「こうしなければならない」というルールはありません。

遊び感覚で色々な方法を試しているうちに、きっとあなただけのアイデアの源泉が見つかるはずです。

何を描くか決まらない時のテーマの見つけ方

「アイデアは浮かんでも、それを一つの作品としてまとめる『テーマ』が決められない」。

そんな風に感じることはありませんか。

前の見出しではアイデアの断片を見つける方法をお話ししましたが、ここでは、それらの断片を繋ぎ合わせて、作品の背骨となる「テーマ」を見つけるためのヒントを探っていきたいと思います。

テーマと聞くと、なんだか壮大で難しいもののように聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。

私の考えるテーマとは、「今の自分が表現したいこと」を指す、ごく個人的な道しるべのようなものです。

誰かに理解されるためではなく、まずは自分自身が「これを描きたい」と心から思えることを見つけるのが、創作を楽しむための鍵だと感じています。

一緒に、あなただけのアートのテーマを見つける旅に出てみましょう。

身近な体験や記憶から探る

私たちの日常や過去の経験は、実はアートのテーマの宝庫です。

何気ない一日の中にも、心を動かされた瞬間はきっとあるはずです。

  • 感動した瞬間を思い出す: 最近、心が「わっ」と動いたことはありましたか?例えば、雨上がりの虹を見た時の感動、美味しいコーヒーを飲んだ時の安らぎ、友人との会話で笑った時の楽しさなど。その時の感情や情景を、抽象的な色と形で表現してみましょう。具体的な形を描く必要はありません。その瞬間の「空気感」や「温度」をキャンバスに閉じ込めるようなイメージです。
  • 夢日記をつけてみる: 夢は、自分でも気づいていない深層心理が表れる場所と言われます。見た夢を簡単な言葉やスケッチで記録しておくと、そこから面白いテーマが生まれることがあります。非現実的で不思議な夢の世界は、抽象表現と非常に相性が良いんですよね。

コンセプトから発想する

具体的な出来事ではなく、もっと観念的な「コンセプト」をテーマに据えるのも、抽象画ならではのアプローチです。

これは少しだけ思考を巡らせる必要がありますが、作品に深みを与えてくれるかもしれません。

例えば、「調和と対立」というテーマを考えてみましょう。

これをどう表現しますか?

  1. 調和: 似たような色(例えば青と緑)を滑らかに混ぜ合わせたり、穏やかな曲線を重ねて描くことで表現できるかもしれません。
  2. 対立: 補色関係にある色(例えば赤と緑)を隣り合わせに置いたり、鋭い直線とぐちゃぐちゃとした線をぶつけ合うように描くことで表現できるのではないでしょうか。

このように、「破壊と再生」「静寂と喧騒」「内と外」など、対になるコンセプトを考えてみると、表現のアイデアが湧きやすくなります。

そして、テーマは一つに絞る必要はありません。

複数のテーマを一つの作品の中で融合させてみるのも面白い試みです。

大切なのは、そのテーマについて深く考え、感じ、自分なりの解釈を絵に託すプロセスそのものです。

最初から大作を描こうと気負わずに、まずは小さなスケッチブックに、思いついたテーマを色や形でメモしていくことから始めてみてはいかがでしょうか。

その積み重ねが、きっとあなただけの表現世界に繋がっていくはずです。

ドリッピングなど簡単な技法から試してみる

抽象画の魅力は、その自由な表現方法にあります。

「こう描かなければいけない」という決まりがないからこそ、絵を描く技術に自信がない方でも、気軽に楽しめるのが嬉しいですよね。

ここでは、専門的な訓練を受けていなくても、直感的かつダイナミックな作品を生み出せる、いくつかの簡単な技法をご紹介したいと思います。

これらの技法は、まるで子供の頃の図工の時間に戻ったかのような、遊び心に満ちています。

大切なのは、上手くやろうとすることではなく、絵の具やキャンバスとの対話を楽しむことです。

偶然生まれる形や色の混ざり合いに、きっと心を奪われる瞬間があるはずです。

さあ、一緒にアートで遊んでみましょう。

アクション・ペインティングの世界:ドリッピングとポーリング

アクション・ペインティングとは、画家の身体的な動き(アクション)そのものが、作品の重要な要素となる絵画のスタイルです。

有名なジャクソン・ポロックの作品を思い浮かべると、イメージしやすいかもしれませんね。

筆で丁寧に描くのではなく、絵の具を垂らしたり、流したりすることで、生き生きとしたエネルギーに満ちた画面が生まれます。

  • ドリッピング: 「垂らし込み」という意味の技法です。少し水で薄めたアクリル絵の具を筆やスティックにたっぷり含ませ、キャンバスの上で振るようにして絵の具を垂らしていきます。リズミカルに手を動かしたり、高い位置から落としてみたりと、動きの強弱によって線の表情が変わるのが面白いところです。
  • ポーリング: 「流し込み」の技法で、ポーリングアートやフルイドアートとも呼ばれます。紙コップなどに入れた複数の色の絵の具を、キャンバスに直接流し込みます。キャンバスを傾けることで、絵の具同士が混ざり合い、細胞のような模様や、美しいマーブル模様が生まれます。これは、絵の具の比重や粘度によって模様が変化するため、まさに一期一会の表現と言えるでしょう。

これらの技法を試すときは、床や壁が汚れないように、ビニールシートなどを敷いておくことをお勧めします。

テクスチャーで楽しむ:スパッタリングとコラージュ

絵画は平面的なものですが、工夫次第で立体的な質感(テクスチャー)を持たせることができます。

視覚だけでなく、触覚にも訴えかけるような作品は、とても魅力的だと思いませんか。

  1. スパッタリング: 「飛び散らせる」技法です。使い古しの歯ブラシや硬い毛の筆に絵の具をつけ、金網や指ではじくようにして、細かい絵の具の飛沫をキャンバスに飛ばします。霧のような柔らかな表現や、星空のようなきらめきを表現するのに適しています。
  2. コラージュ: フランス語で「糊付け」を意味する言葉です。描くだけでなく、新聞紙や雑誌の切り抜き、布、砂、木の葉など、様々な素材をキャンバスに貼り付けて、作品の一部にしてしまいます。異なる素材が組み合わさることで、絵の具だけでは表現できない面白い質感が生まれます。

ここで紹介した技法は、ほんの一例にすぎません。

スポンジで叩いてみたり、ラップを押し付けて模様をつけたり、パレットナイフで削ってみたりと、身の回りにあるものを使って、自由に実験してみてください。

「これを使ったらどうなるだろう?」という好奇心こそが、あなただけの独創的な抽象画の描き方を見つけるための、最高の羅針盤になるはずです。

 

もっと表現が豊かになる抽象画の描き方のコツ

この章のポイント
  • 色の組み合わせで見る人の感情に訴える
  • 有名な画家の作品からインスピレーションを得る
  • おしゃれなインテリアとしてアートを飾るポイント
  • 自分らしい作品に仕上げるためのコツとは
  • まとめ:感覚を大切にする抽象画の描き方の魅力

色の組み合わせで見る人の感情に訴える

抽象画において、色は単なる「色」以上の意味を持つと私は感じています。

具体的な形を描かない分、色は作品の雰囲気やメッセージを伝えるための、最もパワフルな言語になるんですよね。

例えば、同じ形でも、使われている色が赤系統か青系統かによって、見る人が受ける印象は全く違うものになります。

これは、私たちが無意識のうちに、特定の色に対して特定の感情やイメージを抱いているからです。

色の持つ力を理解し、それを意識的に使うことで、あなたの作品はもっと深く、豊かに、そして見る人の心に直接語りかけるような力を持つようになります。

ここでは、難しい色彩理論の話ではなく、すぐに実践できる色の組み合わせのコツについて、一緒に探っていきたいと思います。

色の持つイメージを理解する

まずは、それぞれの色が一般的にどのようなイメージや感情と結びついているかを知ることから始めましょう。

もちろん、これは文化や個人の経験によって変わるので、絶対的な正解ではありません。

あくまで、表現のヒントとして捉えてみてください。

  • 暖色(赤、オレンジ、黄色など): エネルギー、情熱、暖かさ、喜び、危険といった、アクティブで感情的なイメージを喚起します。画面に活気や力強さを与えたい時に効果的です。
  • 寒色(青、緑、紫など): 冷静、静寂、悲しみ、神秘、知性といった、穏やかで内省的なイメージと結びつきます。落ち着いた雰囲気や、奥行きのある空間を表現するのに適しています。
  • 無彩色(白、黒、グレー): 白は純粋さや光、黒は力強さや死、不安、グレーは中立や都会的な洗練さを感じさせます。有彩色と組み合わせることで、その色をより引き立てる効果があります。

効果的な色の組み合わせ(配色)の基本

次に、これらの色をどのように組み合わせれば、意図した効果を生み出せるのかを見ていきましょう。

配色の基本を知るだけで、作品の完成度がぐっと上がると感じています。

  1. 補色: 色相環で正反対に位置する色の組み合わせです(例:赤と緑、黄色と紫、青とオレンジ)。お互いの色を最も鮮やかに見せる効果があり、画面に強いコントラストと緊張感、活気を与えます。ダイナミックで目を引く作品にしたい場合におすすめの配色ですね。
  2. 類似色: 色相環で隣り合っている色の組み合わせです(例:黄色、黄緑、緑)。色相が近いため、まとまりやすく、調和のとれた穏やかで安定した雰囲気になります。
  3. トーンを合わせる: トーンとは色の調子のことです。例えば、すべての色に少しずつ白を混ぜてペールトーン(淡い色調)で統一したり、逆に黒を混ぜてダークトーン(暗い色調)で統一したりします。色相がバラバラでも、トーンを揃えるだけで、画面全体に統一感が生まれます。

これらの基本を知った上で、最終的に大切なのは、理屈よりも自分の「好き」という感覚です。

パレットの上で色を混ぜ合わせている時に、「あっ、この色の組み合わせ、なんだか心地良いな」と感じる瞬間があるはずです。

その直感を信じて、自由に色と戯れてみてください。

あなたの選んだ色の組み合わせそのものが、あなただけの個性的なアートになるのですから。

有名な画家の作品からインスピレーションを得る

アートの世界を探求していると、過去の偉大な芸術家たちが残してくれた作品という、素晴らしい宝の山に出会うことができます。

特に、抽象画の歴史を切り拓いてきた画家たちの作品は、これから抽象画を描こうとする私たちにとって、尽きることのないインスピレーションの源泉になると、私は常々感じています。

彼らの作品を鑑賞することは、単に美しい絵を見るというだけでなく、その画家が何を考え、何を感じ、どのように世界を捉えていたのかという、その思考の軌跡を辿る旅のようでもあります。

大切なのは、彼らのスタイルをそっくり真似することではありません。

彼らの作品と対話し、「なぜこの色を使ったのだろう?」「この線の動きは何を表現しているのだろう?」と問いかけることで、自分自身の表現の引き出しを増やしていくことです。

ここでは、私が特に心惹かれる数人の抽象画家と、彼らの作品から得られるヒントについてお話ししたいと思います。

ワシリー・カンディンスキー:内なる響きを描く

カンディンスキーは、「抽象絵画の父」とも呼ばれる画家です。

彼は、目に見える世界を再現することから絵画を解放し、音楽のように、色と形だけで人間の内面的な感情や精神的な「響き」を表現しようと試みました。

彼の作品を見ると、リズミカルな線、浮遊するような形、そして響き合うような色彩が、まるで交響曲のように画面上で展開されているのが分かります。

インスピレーションのヒント:
あなたの好きな音楽を聴きながら、カンディンスキーのように、その音やリズム、メロディーを色と形に翻訳してみるのはいかがでしょうか。音の高さや強弱を、線の太さや色の濃淡で表現してみるのも面白いかもしれません。

ジャクソン・ポロック:身体の軌跡を刻む

ポロックは、先ほども少し触れた「アクション・ペインティング」の代表的な画家です。

彼は床に広げた巨大なキャンバスの上を歩き回りながら、缶から直接絵の具を滴らせ、流し込み、撒き散らすという革新的な方法で作品を制作しました。

彼の作品は、絵筆によるコントロールから解放された、絵の具と身体の動きそのものが作り出した、生のエネルギーの痕跡と言えるでしょう。

インスピレーションのヒント:
理屈で考えずに、身体を動かすことの楽しさを優先してみましょう。ドリッピングやポーリングの技法を使って、絵の具が偶然作り出す形や混ざり合いを、ただ楽しむ。そのプロセス自体が、あなただけのアートになります。

マーク・ロスコ:色彩の海に心を浸す

ロスコの作品は、巨大なキャンバスに、境界線がぼやけた四角い色彩の領域がいくつか浮かんでいる、という非常にシンプルな構成です。

彼は、自分の絵を「ドラマ」と呼び、見る人がその色彩の海の中に没入し、深い精神的な体験をすることを意図していました。

彼の絵の前に立つと、喜びや悲しみ、恍惚といった、言葉にならない感情が静かに湧き上がってくるのを感じることがあります。

インスピレーションのヒント:
特定の感情(例えば「静寂」や「希望」)を選び、その感情を表現するのに最もふさわしいとあなたが感じる2色か3色だけを使って、画面を構成してみましょう。形はシンプルで構いません。色の持つ力だけで、どこまで感情を表現できるか試す、良い訓練になります。

これらの画家たちの作品に触れることは、抽象画の描き方の可能性が無限であることを教えてくれます。

美術館に足を運んだり、画集を眺めたりして、ぜひあなたのお気に入りの画家を見つけてみてください。

その出会いが、あなたの創作活動をより豊かなものにしてくれるはずです。

おしゃれなインテリアとしてアートを飾るポイント

自分で描いた抽象画が完成した時の喜びは、本当に特別なものですよね。

その大切な作品を、ただしまっておくだけではもったいないと思いませんか。

ぜひ、お部屋の壁に飾って、日常の中でアートを楽しんでみてください。

自分の作品が空間の一部になることで、お部屋はぐっと個性的でおしゃれな雰囲気になりますし、何より、目にするたびに創作の喜びを思い出し、次の創作意欲にも繋がると私は感じています。

アートを飾るというと、少しハードルが高く感じるかもしれませんが、いくつかの簡単なポイントを押さえるだけで、誰でも素敵なディスプレイが可能です。

ここでは、自分の作品をインテリアとして魅力的に見せるための、いくつかのコツをご紹介したいと思います。

飾る場所と高さを考える

まず最初に考えたいのが、どこに飾るか、ということです。

絵を飾るだけで、その空間の印象は大きく変わります。

  • 基本は目線の高さに: アートを飾る際の基本は、立って見た時に、絵の中心が自分の目線の高さに来るようにすることです。一般的には、床から140cm〜150cmくらいの高さが目安とされています。これにより、自然な視線で作品を鑑賞することができます。
  • 家具とのバランスを意識する: ソファの上や、チェストの上に飾る場合は、家具の幅とのバランスを考えると良いでしょう。一般的に、絵の横幅が家具の横幅の3分の2程度だと、バランスが良く見えると言われています。
  • 照明を工夫する: スポットライトなどを当てて作品を照らしてあげると、美術館のような特別な雰囲気を演出できます。光が当たることで、絵の具の質感や色の深みがより際立ちます。

フレーム(額縁)選びの楽しみ

フレームは、作品の魅力を引き立てるための、いわば「衣装」のようなものです。

どんなフレームを選ぶかによって、同じ作品でも全く違う表情を見せてくれます。

最近では、キャンバスの側面まで見せる「フローティングフレーム(ボックスフレーム)」が人気ですね。

作品が浮いているように見え、モダンで洗練された印象を与えてくれます。

他にも、シンプルな木製のフレームはナチュラルで温かみのある雰囲気に、ゴールドやシルバーの金属製のフレームは、高級感とモダンな印象を与えてくれます。

作品の色やスタイル、そしてお部屋のインテリアのテイストに合わせて、最適な一着を選んであげるのも、アートの楽しみの一つです。

複数の作品を組み合わせて飾る(ギャラリーウォール)

もし小さな作品がいくつかあるのなら、それらを一箇所にまとめて飾る「ギャラリーウォール」に挑戦してみるのもおすすめです。

大きさの違う作品や、フレームの色が違う作品をランダムに配置することで、壁一面があなただけの個性的なアートスペースになります。

配置する前に、床に作品を並べてみて、全体のバランスをシミュレーションしてみると失敗が少ないですよ。

自分の手で生み出したアートが、日々の暮らしを彩る。

これほど素敵なことはないと、私は思います。

ぜひ、あなただけの小さな美術館を、お部屋の中に作ってみてください。

自分らしい作品に仕上げるためのコツとは

抽象画の描き方の基本的なステップや技法、そして色の使い方などを探求してきましたが、最後に皆さんと一緒に考えたいのは、「どうすれば『自分らしい』作品になるのか」ということです。

技術や知識はもちろん大切ですが、アートの最終的な目標は、誰かの真似をすることではなく、自分だけの視点や感情を表現することにあると、私は強く感じています。

「自分らしさ」とは、一体何なのでしょうか。

それは、決して最初から明確に存在するものではなく、描いて、試して、失敗して、また描いて、という創作のプロセスの中で、少しずつ見えてくるものなのかもしれません。

ここでは、あなたという唯一無二の存在を作品に映し出すための、いくつかの心構えやヒントについてお話ししたいと思います。

「失敗」という概念を手放す

抽象画の世界において、私は「失敗」という言葉は存在しないと考えています。

写実的な絵画であれば、形が歪んでいたり、色が違っていたりすることが「失敗」と見なされるかもしれません。

しかし、抽象画にはお手本がありません。

思った通りの色にならなかったり、意図しない線が描けてしまったりすること。それらは失敗ではなく、「予期せぬ発見」であり、「ハッピーアクシデント」なのです。

むしろ、その偶然の出来事から、自分でも想像しなかったような面白い表現が生まれることが多々あります。

計画通りに進まないことを恐れずに、その場で起きる変化を楽しんで、柔軟に対応していく。そのプロセスこそが、あなただけのオリジナルの作品を生み出す原動力になります。

「いつやめるか」を知る勇気

絵を描き始めると、夢中になってつい手を加えすぎてしまうことがあります。

「もっと良くできるはず」という気持ちはとても大切ですが、時にはそれが作品の良さを消してしまう原因にもなり得ます。

抽象画制作において最も難しいことの一つは、「完成のタイミング」を見極めることかもしれません。

私が心がけているのは、少しでも「あっ、今、良いな」と感じる瞬間があったら、一度筆を置いて、キャンバスから離れてみることです。

数時間後、あるいは次の日に改めて見てみると、客観的な視点で作品を捉えることができます。

そこで「もう何も加える必要はないな」と感じたら、それがあなたの作品の完成の合図です。

「描き足す」ことだけでなく、「描かない」という選択をする勇気も、良い作品を作る上では非常に重要なんですよね。

シリーズで制作してみる

もし特定のテーマや技法、色使いが気に入ったら、それを一つの作品だけで終わらせずに、複数の作品で展開してみる「シリーズ制作」をおすすめします。

同じテーマを、違うサイズや違う構図で繰り返し描くことで、そのテーマに対する自分の考えや感じ方が、より深く掘り下げられていきます。

また、いくつかの作品を並べてみることで、そこに共通する特徴やパターンが見えてくることがあります。

それこそが、あなたの「スタイル」や「作風」と呼ばれるものの、まさに芽生えの瞬間なのかもしれません。

自分らしさとは、探して見つけるものではなく、創作を続ける中で、自然と滲み出てくるもの。

焦らず、気負わず、ただひたすらに描くことを楽しむ。

その先に、きっとあなただけの表現が待っているはずです。

まとめ:感覚を大切にする抽象画の描き方の魅力

ここまで、抽象画の描き方について、道具の準備から具体的な技法、そして表現を深めるためのコツまで、様々な角度から一緒に探求してきました。

長い道のりでしたが、いかがでしたでしょうか。

もし、この記事を読んで、「なんだか私にもできそうかも」「ちょっと描いてみたくなった」と少しでも感じていただけたなら、私にとってそれ以上に嬉しいことはありません。

抽象画の描き方の最大の魅力は、突き詰めると「正解がない自由さ」にあると私は思います。

美術の成績が良くなくても、絵の才能に自信がなくても、全く問題ありません。

大切なのは、テクニックの上手さではなく、自分の心の中にある感情や、ふと感じたインスピレーションを、素直にキャンバスにぶつけてみることです。

それは、言葉にする前の、もっと生の、純粋な自己表現と言えるかもしれませんね。

最初は、ただ好きな色を塗るだけでも良いのです。

音楽に合わせて手を動かしてみるだけでも良いのです。

その行為そのものが、あなたとアートとの対話の始まりです。

描いているうちに、思いがけない色の混ざり合いに心を奪われたり、偶然できた線の形にインスピレーションを受けたりと、次々と新しい発見があるはずです。

その一つ一つの発見を楽しみ、自分の感覚を信じて筆を進めていく。

そのプロセスの積み重ねが、最終的に、世界にたった一つしかない、あなただけの作品を生み出します。

この記事でお伝えしたかったのは、抽象画の描き方というノウハウだけではなく、アートを通じて自分自身と向き合い、表現する喜びそのものです。

ぜひ、難しく考えずに、まずは小さな一歩を踏み出してみてください。

その一歩が、あなたの日常をより豊かで創造的なものに変えてくれる、素晴らしい旅の始まりになることを、私は心から願っています。

この記事のまとめ
  • 抽象画の描き方に決まった正解はなく誰でも始められる
  • 初心者はまずキャンバスや筆など基本的な道具から揃えよう
  • 絵の具は乾きが早く扱いやすいアクリル絵の具がおすすめ
  • アイデア出しは感情を色にしたり音楽を聴いたりして行う
  • テーマは身近な体験や感動した瞬間から見つけられる
  • ドリッピングなどの簡単な技法は遊び心で試せる
  • ポーリングは偶然生まれる美しいマーブル模様が魅力
  • 色の組み合わせは作品の感情を伝える強力な言語になる
  • 補色や類似色など配色の基本を知ると表現が豊かになる
  • カンディンスキーなど有名画家の作品はインスピレーションの宝庫
  • 完成した作品はインテリアとして飾ることで日常が彩られる
  • アートを飾る基本は目線の高さに合わせること
  • 自分らしい作品のためには失敗を恐れない心が大切
  • 完成のタイミングを見極める勇気も時には必要
  • 感覚を信じて描くプロセス自体が抽象画の醍醐味である

 

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